【神話と寓話】 石のスープ

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陽が地に沈むころ、ほこりだらけの道を、これまたほこりにまみれたベルナルド師がトボトボと歩いていました。ロザリオはちりんちりんと鳴り、おなかはグウグウと鳴っておりました。

長い道のりです。でもこれは修道院に辿り着くまでの道のりが長いのではありません。彼は頭が良く、また頑丈な肉体を持っていました。お腹がいっぱいならば100レグアくらいも歩けるのに・・・。でもいくら歩いても迷子のニワトリにも会わないしリンゴの木が見つかるわけでもないし、ごちそうしてくれる誰かに出会うこともありません。ああ、何にも食べるものがない!

あとちょっとでブツブツと人生を嘆きかけたその時、遠くに農場が見えました。おお、我をお守り下さる主、我をお忘れ下さらなかったのだ! ベルナルド師はニマリと満足げに微笑みました。悪いことがいつまでも続くわけではないのだ。ささやかな幸福-きっと食べ物にありつけるに違いない。

しかし、何もかもがそううまくいくわけではありません。人生は困難の連続です。何年も続いた干ばつで穀類は芽を出さず、菜園の野菜類はしおれ、動物たちは飢えと渇きのため死んでしまっておりました。領主たちはいつも通り重税を課しておりましたが、遠い地の敵を倒すために男たちは去り男手はなし。

カラカラに干上がった大地からは殆どなにも採取できない状態。かろうじて収穫したほんのわずかの食べ物は、各家庭、皆誰にもわからないようにこっそりと隠して、自分たちのためだけに充てていたのでした。これらすべてのことを、善良なるベルナルド師はよく知っておりました。彼は悪人でも詐欺師でもありません。

ただ現実の道を進まねば、彼は食べられないのです。他に食べる近道はあるか?茅葺の屋根で黒っぽい石の壁の家に近づくにつれて、ある考えが彼の頭に浮かびました。道ばたに落ちている石を拾い上げ、にこりと微笑みました。それはただの丸い石。

ついている埃をていねいにはらってゴシゴシと磨き、ドアを叩きます。

「誰?」女の声がしました。「神のご加護を、奥さん。そこに鍋があったら貸してくれないかい。それと、水があったらほんの少しでいいからわけておくれ。今ここに炭火をおこして『石のスープ』を作るから。」

「なんですって?! そんなこと本気にすると思ってるの!」赤ちゃんのいるその大きなお腹に手をのせながら、女は笑い飛ばしました。「石のスープですって?そんなの聞いたこともないわ!」「そりゃあ、私の出身の小さな村の食べ物だからね。知らないのも無理はない。よく食べたものですよ。とても美味しいですよ。見てみたいかい?」

それを聞くと女の好奇心がムズムズとうずきはじめました。あからさまに、まるで5頭のニワトリでも見るような感じで、修道士をジロジロと見つめます。「いいわよ、作ってみてよ。」彼女は半信半疑ながら、面白そうだと思いそう言いました。

「なあに、簡単さ。すぐ作れるよ。まず、鍋の中にこの石と水を入れる、そしてぐつぐつと煮立てる。」先ほどピカピカに磨いたその石を示しながら、ベルナルドは説明します。女は信じがたいとは思いましたが、好奇心には勝てず、鍋と水を取りに行きました。ベルナルド師は木片を6つかき集め、そこに火をつけ、炎が強くなったころ、石を入れた鍋を上に乗せました。

これから何が起こるのかを観察するように腕を組んで見つめます。それから、ロザリオを手でもてあそびながら、暫く黙ってそこに座っていました。時間が経ち、水が沸騰しはじめました。石が中に入っています。女は、ずっと信じられないままでしたが、修道士から目が離せませんでした。

「あー、もういいかな。どれどれ、う~ん。」そう言いながら彼は一口試します。 「う~ん、少し塩味が足りないな。塩があるといいんだけどねえ。」

女は塩を取りに行きました。ベルナルド師は礼を言い、またロザリオの玉をもてあそびます。女は、彼の言ったことを全く信じていないふりを続けていましたが、その心は好奇心でいっぱい。でもそれを押し隠し彼の様子を観察しつつ雑用事を続けておりました。修道士は女のそんな様子には気づかないふりをしました。しばらくたってから女が耐え切れなくなって質問しました。

「スープ・・・どう?美味しくなったかしら。」 「美味しいかって?そりゃあ、わたしが今まで食べたものに比べればねえ。う~ん、もし小さなジャガイモ一個とキャベツの葉を一枚足せばねえ、もうちょっと美味しくなると思うよ。」

女は菜園に行き、ジャガイモを二個とタマネギ、キャベツの葉を何枚か取って戻って来ました。そんなにも頼んだわけではありませんでしたが、ベルナルド師はしめしめとそれらを受け取りました。美味しい野菜スープが既に彼の前に出来上がっています。しかしながら、ちょっと時間が経ったら、また女のほうを振り返りこう言いました。

「このスープは悪くはない。でももしニンニク一切れとオリーブオイルが少しと、チョリソーの輪切り2枚あれば・・こりゃあ最高のスープになるよ!」

スープの素晴らしくいい匂いがしています。女は家に入り、必要なものを持って来ました。「さあ、あとは何が必要だと思う? 奥さん。スープのいれものをここに持って来て、座りなよ。スープ2人分の出来上がりだ!」

ベルナルド師が美味しい石のスープを充分に堪能したので、女は彼に大切な自分たちの食料を恵む必要はないのだと、ホッと胸をなでおろしました。彼の巧みな話術で、食べ物を既にあげているなんてことにまったく気がついていなかったのです。

「ところで、その石はどうするの?」鍋の底までスープを食べ尽くした後、女がそう質問しました。「この石かい? そりゃあ、またスープを作るために持って行くよ。」ベルナルド師は満足げに二ヤリと笑い、そう答えました。

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参照文献 【石のスープ】 石のスープは、ポルトガルに伝わる民話。そしてそのエピソードから、協力を集めるための呼び水の比喩にも使われる。似た形の民話はヨーロッパ各地にあるが、北ヨーロッパでは石の代わりに東ヨーロッパではが使われている。

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