不偏的な社会的影響力の原理
- 返報性:恩恵を受けたら報いなくてはならないと感じること
- 権威:専門家に指示を仰ごうとすること
- コミットメントと一貫性:自分のコミットメントや価値観と一貫した行動をとろうとすること
- 希少性:手に入れにくいものほど求めたがること
- 好意:好意をもつ相手ほど賛同したくなること
- 社会的証明:他人の行動を指針とすること
社会的証明の原理:インフォマーシャル売上激増事例
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【不安を感じさせて高める説得力】
お決まりのセリフを3か所変えるだけで購買者数が激増した その3か所の変更する仮説的視点は、“注文するのは面倒かもしれない” とお客に思わせるものである。
旧来:オペレーターがお待ちしています。いますぐお電話ください。
変更:オペレーターにつながらない場合は、恐れ入りますが、繰り返しお電話ください。
【社会的証明】 個人の意見の妥当性を証明することを指す。人は、集団の中で自分を支持する意見が全くないと、自己の意見の妥当性に疑問を感じ、意見を取り下げてしまうのが普通である。しかし、自分を支持する意見が1つでもあると、状況が一変する。
つまり、人は誰でも、自分ではどうしたらいいのか分からない時には、周りに向けて他人の行動を手本とするという法則を販売にも当てはめた結果と言える。 「電話に繋がらないということは、他にも私みたいにテレビを観て電話している人がいるのだ」と考えると論じている。
スタンレーミルグラムのグループ実験では、【実験:note on the drawing power of crowds of different size 】 一人の研究助手が雑踏で不意に立ち止まり、六十秒間空を眺め、ほとんどの通行人は彼が何を見ているかを気に留めず、避けて通っていきます。ところが、空を眺める助手の数を4人増やしたところ、一緒になって空を見上げる通行人の数が4倍以上にふくれあがったと研究報告がなされている。
他人の行動が、社会的影響の強力な要素であるのは疑いのないことだが、「あなたの行動は他人の行動に左右されますか」と尋ねると、皆絶対にそんなことはないと言い張ると伝え、人は何が自分の行動に影響を与えているかを自分ではほとんど認識できていない。
社会的証明の効果を意識するこれらのやり方を説得やセールスに応用できることは、現在のマーケティング活動を見れば、明らかであり、ほとんどが効果的に影響力(インフルエンス)を利用しているのが見えてくる。
“皆もそうしているのだから、健康の為に痩せなさい”といった表現では、良い反応は期待できないが、”あなた自身が倒れても良いが、大切な子供の将来の為に倒れたいと思いますか”というように、肯定的な表現に変えれば、好意的に受け止めてもらえるだろう。
また大事な商談の場合でも、見込み客から”また折り返し電話します”と言われたら、”繋がらない場合は、繰り返しお電話ください”と伝えることをどうぞお忘れなく。
バンドワゴン効果をパワーアップ
【バンドワゴン効果】 ある選択が多数に受け入れられている、流行しているという情報が流れることで、その選択への支持が一層強くなることを指す。”バンドワゴン”とは行列の先頭の楽隊車のことであり、”バンドワゴンに乗る”とは、時流に乗る・多勢に与する・勝ち馬に乗る、といった意味である。 政治学・社会学と経済学で使われる。対義語は”アンダードッグ効果”、バンドワゴン効果は、”バンドワゴンの誤謬”(衆人に訴える論証)が成功したときに発生する効果である。
ホテルの実験:タオルの再利用を訴えた社会的証明のメッセージ効果について
① 一般的な環境保護メッセージが書かれたカード
② ホテルに泊まった多くの人々が協力してくれたことを伝えるカード
③ 過去にそこに泊まった多くの人々が再利用に協力してくれたと伝えるカード
③は②よりも協力する率が高く、①のグループに比べ、33%向上した。
人はある特定の環境に自分自身をぴったりと適合させてくれるルールに従うのが、一番無難な選択と考える。図書館の例が分かりやすいが、静かに本棚を見ながら、たまに友達と声をひそめて話している人の行動を見習うでしょうか。それとも、大声で話したり、行きつけの酒場のように行動を振る舞うでしょうか。たいていの人は前者を選ぶ。
この実験から分かることは、説得をする際に説得する相手と似ていれば、説得力が増すということがわかります。説得したい相手には、相手の状況に一番近い人を選ぶべきです。
これは私の事例であるが、管理職が部署に新しい設計システムを導入し効率を上げて売上を向上するする際の技法として使われていたが、長く旧来のシステムを使っていて、導入に反対する管理職にまったく共通点の無い、システム担当を説得にあたらせていたが、これでは正反対である。案の定その企業は低迷していった。
一方、急成長していた企業では同じようなシステム導入の際に、説得したい部署を除き、協力し境遇のよく似た管理職の部署から段階的に入れ、効果を実証してから、そのよく似たタイプの管理職から説得させていた。同じようなシステムを使いそれに愛着を持っていた人が、説得する方が効果的であると現場でも散見された。
参照記事 【Lessons from Cialdini: what can we learn from hotel towels?】
社会的証明の思わぬ落とし穴
The Crying Indian – full commercial – Keep America Beautiful
キープ・アメリカ・ビューティフル公共広告:皆が無関心だから戻って来たよ
この広告が示す通り、社会的証明の原理は、実は諸刃の剣ということが示されている。 歯医者や病院などの予約をすっぽかす人が多いことや、政治への無関心から投票の大事さを訴えてはいるが、投票率はどんどん下落しています。
WORLD’S BEST HERITAGE GRAFFITI REMOVER
例えば一向に減らない世界遺産への落書きについてもいえることですが、ひょっとしてネガティブな社会的証明を使ったせいで、人々の注意が、その行為がいかに悪いかではなく、いかに頻繁に行われているかに向けてしまっていることに気が付いているのかどうかが心配です。
好ましくない行動が起こっているという社会的証明のメッセージが、意図せずに害を引き起こしてしまうのであれば、情報発信者はネガティブな社会的証明は伝えずに、その場でどう行動すべきか、もしくはすべきでないかという点に情報の受け手の注目を集める必要があります。
状況が許すのであれば、好ましい行動をしている人たちのほうに焦点をあてるほうがよいでしょう。
“いつもきれいに使って頂きありがとうございます”
あなたは少数派ですよという事実を教えてあげてください。
平均値の磁石効果を防ぐには
人は平均値から外れていると感じれば、平均値に向かって引き寄せられる傾向があるという。これを平均値の磁石効果と呼ぶそうだ。
カリフォルニア州の約300世帯からエネルギー消費量の記録実験:著者達とウェス・シュルツとの共同調査
【実験内容】 研究助手が協力家庭を訪ねてメーターをチェックし、週にどれだけエネルギーを消費したかという基準測定値を求めた。 そのあと、各家庭の玄関に、その家庭の消費量に加えて、近隣家庭の消費量の平均値を記した小さなカードをぶら下げた。 当然、全体の半数の世帯は平均より消費量が多く、残りの半数は平均より少ないことになります。カードをぶら下げたことによって消費量がどのように変化するのか数週間後の結果。
隣近所よりも消費量が多かった世帯は、消費を抑える結果5.7%減らしていた。 これは別に驚くことではないですが、面白いのは、平均より少なかった世帯で、8.6%も消費量が増えた。
この結果は大多数の人がとる行動には”平均値の磁石効果”があること、平均値から外れている人は元の行動の良し悪しにかかわらず、自分の行動を世の中の標準に合わせようとするようです。
このことから、社会的規範が磁石のように人々の行動を引き寄せ、望ましい行動をとっている人に対して彼らの行動を肯定するメッセージを伝えると、社会規範によるマイナス効果を減少させることが分かったそうです。
私の場合は、予算計画面で磁石効果を検証したことがあります。つまり予算が当初の平均値を示した場合、設計者などはその予算に応じた平均値に引き寄せられる傾向が見られました。 平均値でなくとも、施主は出来る限り安価の方が良いことが多いのであるが、予算を平均まで寄せようと(使い切ろうと考える傾向)があり、平均値を抑える必要があるなとプロジェクトを通じて痛感した次第です。
参照画像 【(CHIP EAST/Reuters/Corbis)】
選択肢が多すぎると買う気が失せる
シーナ・アイエンガー:選択をしやすくするには
行動科学者のシーナ・アイアンガーが選択ついての研究を行ったことが上記の動画で明らかにしている。
同一コーナーでいろいろなジャムを試食できるようにしたが、2か所の試食コーナーを設け、そのうち1か所には、6種類のジャム、もう1か所には24種類のジャムを置いて結果を調べた。
選択肢が豊富なほうのコーナーで立ち寄った人の3%しかジャムを買わなかったのに対し、選択肢が限られているほうのコーナーでは30%もの人が買った研究結果を報告している。
また、P&Gは、26種類あった売れ筋のシャンプーをたった15種類に減らしたとたん、あっという間に売り上げが10%伸びた。以上の事柄から、顧客が自分の好みを正確に把握していない場合、特に効果があることが分かります。
マーケティング関係者は、もし顧客が自分に何が必要かはっきり分かっていないとしたら、選択肢が多すぎるせいで他者に顧客を奪われないだろうかどうか、自分自身に問いかける必要があると指摘しています。
たしかに私も買い物での一番の悩みは、選択肢が多すぎてどれを選んでよいか分からない場合が多い。その場合その店舗で二度と買わないだろう。ちゃんとしたキュレーションが出来ていない限りいつもそこで躓くからだ。
参照文献 【影響力の武器 実践編―「イエス!」を引き出す50の秘訣】
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