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システム思考
ビジネスその他における人間の営みはシステムとなる。それらは相互に関連する見えない糸で織りなされている。
お互いの影響がすっかり作用しきるには何年もかかることもあるが、私たち自身がその一部であるのだから、移り変わるパターン全体を把握するには二重に困難となる。
とくに人はシステムのばらばらの部分に目を奪われてしまう。自分の抱える深刻な問題がいつまでたっても解決されないというのはどういうわけかといぶかるのだ。
システム思考はひとつの概念の枠組である。全体のパターンを明らかにし、それを有効に変えていくすべを人々に把握させるために、長年にわたり蓄積された知識とツールの総体である。
そこで今回は、そのシステム思考の典型的な11のパターンを順にみていこうと思います。
さらに詳しい内容を知りたい方は 【 最強組織の法則―新時代のチームワークとは何か 】 を参照されたし。
11の典型的パターン
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今日の問題は 昨日の「解決策」からくる
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システムは押せば押すほど強く押し返す
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状況はいったん好転してから悪化する
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安易な出口は通常元に戻る
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治療策が病気そのものより問題なことがある
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急がば回れ
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原因と結果は時間的・空間的に近接しているとはかぎらない
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小さな変化が大きな結果を生む事がある。一番効果のある手段はしばしば一番見えにくい
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ケーキを手に入れ、しかも味わうことができる_同時にではないが
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一頭の象を分割しても子象二頭にはできない
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罪を着せる外部は無い
1. 今日の問題は 昨日の「解決策」からくる
絨毯商人の寓話
手持ちの一番美しい絨毯の真ん中に大きなこぶができた。彼はそのこぶを平らにしようと踏みつけて、首尾よく成功した。しかしこぶはそう遠くない場所にまた現れた。彼がふたたびこぶを踏みつけると、こぶは消えた。一時的に。やがてこぶはまた別の場所に現れた。彼は何度となくこぶを踏みつけ、憤懣のあまり絨毯をすり切らし、傷めてしまう。ようやくひと隅をもちあげてみると、不思議な蛇が這い出してきた。
問題は引き継がれる
実績のある企業が、今四半期の売上が急増したことに気付く。なぜ?前四半期の割引プログラムが人気を呼んで、いままでになく顧客が増えたからだ。
新任の責任者が慢性的にかさむ在庫コストに挑戦し、その問題を解決する。ただし営業スタッフはいま、納品の遅れに腹を立てた顧客に応対するのに二割増しの時間をとられ、残りの時間は見込み客を納得させるのに懸命である。
システム内のある場所から別の場所へ問題を移すだけの解決策は、看破させずに通ってしまうことがある。絨毯商人と違って、最初の問題を「解決」した人間とは別の人間が、新たな問題を引き継ぐからだ。
2. システムは押せば押すほど強く押し返す
補償的フィードバック
善意で介入したことにシステムが反応して、介入の利益を相殺してしまうことであるが、押せば押すほど、システムは強く押し返す。事態を改善しようと努力すればするほど、なおさら努力が要求される。
その経験する局面
多くの企業が補償的フィードバックを経験するのは、商品のひとつが市場での魅力を急に失いはじめるときである。そこでパターンにはまった彼らは、攻撃的マーケティングをいっそう推し進める。
過去にはいつもこのやり方で乗り切ったではないかと。宣伝費を増やし、値段を下げる。これで客を一時的には取り戻せても、企業のコストも同時にかかる。だから余計に相殺されるのだ。
サービスの質が落ちてくる。長い目で見れば、がむしゃらに売ろうとすればするほど、客は減っていく。
補償的フィードバックは「大組織」だけの問題ではない。個人の例では、タバコをやめたら体重が増えて、自己イメージがひどく傷ついたため、そのストレスを和らげようとまたタバコに手を出す。
または、過保護の両親が、息子と級友たちの仲がうまくいくのを願うあまり問題解決にしゃしゃり出て、息子は自分の解決する知恵をとうとう身につかない。あるいはやる気満々の女性社員が、人に好かれようとするあまり、自分の仕事にたいする遠回しの批判についに反応しない。あげくに「一緒に仕事しづらい人間」のレッテルが貼られ、嫌われてしまう。
よけいに頑張るのは、攻撃的姿勢を強める場合でも、自然な本能をますます抑制する場合でもはなはだ疲れる。個人としても組織としても補償的フィードバックに引き入れられるばかりか、それに伴う美化することが少なくない。勤勉はすべての障害に打ち勝つという信条によって、その間、障害を自分で強めていることに目をつぶったままになる。
3. 状況はいったん好転してから悪化する
【関連書籍】当たりだった書籍。合わせて読んでいくと深い理解が得られる書籍だと思います。
対症療法的措置は、多くの場合、短期的には効果があるという事実をのぞけば、魅力はずっと乏しいはずだ。
多くの経営管理策は、それを実施すればいったん好転してから悪化する。政治的意思決定がひどく逆効果なのはそれゆえである。
政治的意思決定とは、いくつかの行動選択に本来備わっている利点以外の要素、自分の勢力基盤を広げようとか「よく見られよう」ないしは「ボスに気に入られよう」といった要素が意思決定を左右する場合だ。キーワードは「最終的に」である、常識的解決策は、はじめに症状を治すとすばらしいものに思える、改善がみられた、もしかしたら問題自体消えたかもしれないと。
二年、三年、あるいは四年して問題が復活するかもしれず、新しいもっと困った問題が生じるかもしれない。離職率は増加の一途を辿り、そのころには、新しい誰かがその椅子に座っている。
4. 安易な出口は通常元に戻る
一番よく心得ていることに固辞し、なじんだ解決策を問題にあてはめて安心するところがだれにもある。解決策が楽にわかったり、誰にも一目瞭然なら、たぶんとっくに見つかっているはずである。
なじみの解決策を次から次へと試みて、それでも問題の根本が残るか悪化するなら、それは非常にシステム思考を示す指標と見て間違いない。
5. 治療策が病気そのものより問題なことがある
安易な、またはなじみの深い解決策は、ときとして効果が無いばかりか、くせになって危険な場合もある。アルコール依存症は、単なる社交上の飲酒ではじまることがある。
低い自己イメージや仕事のストレスの治療策として、その治療策が、だんだん症状そのものよりもひどくなる。さまざまな問題を引き起こし、自己イメージやストレスは当初より悪化するのである。
政府の不適切な対策は、単に効果がないばかりか、自分の問題の解決を他者に依存する体質を養ってしまう点で「中毒性をもつ」からである。
あるシステムを援助する。けれどもその結果、そのシステムは前よりも基本的に弱くなり、援助をさらに必要とする体質になってしまうのである。
6. 急がば回れ
なんでもそうだが、おのずから成長に最適な速度がある。この”最適な成長速度”は最速の場合に比べるとはるかに遅い。成長速度が極端になると、癌組織のようにシステム自体が速度を緩めることで埋め合わせようとする。
自分が好んでとってきた対策が、これらのシステム原則の働きによって挫折させられるのを認識しはじめると、管理職らは幻滅し、意欲をくじかれるかもしれない。
行動しない口実にもなりうる。といった行動が不首尾に終わる。あるいは事態をなお悪くする恐れすらあるなら、いっそ何もしないほうがましだと、これは「半可通はかえって危険」の典型的症状である。
真の目的は、行動しないことではなく、新しい考え方に根ざす新しいタイプの行動であり、問題に対処する常識的やり方よりも挑戦的で、しかも成果を期待できる方法である。
7. 原因と結果は時間的・空間的に近接しているとはかぎらない
【関連書籍】なにげなく購入した書籍ですが、非常に深い考察と見識を得られる名著。おススメ。
すべての問題の根底にあるのは、複雑な人間組織の根本的特徴_すなわち「原因」と「結果」は時間的・空間的に近接しているとはかぎらないということである。
われわれの困難の根は問題の執拗さでも邪悪な敵でもなく、われわれ自身である。複雑なシステムの現実の性質と、その現実をめぐるわれわれの考え方に根本的ズレがあるのだ。
そのズレを直す第一歩は、原因と結果が時間的・空間的に近いという観念を捨てる事である。
8. 小さな変化が大きな結果を生むことがある。しかし一番効果のある手段はしばしば一番見えにくい
システム思考は同時に、小さくてもツボを押さえた行動は、適切な場所でなら、重要な持続する改善を生むことができると考えると、この原則をレバレッジと呼ぶ。
困難な問題を取り組むということは、しばしば、ハイ・レバレッジのある場所、すなわち効果的作用点をとらえるということである。
最小の努力によるひとつの変化が、持続する意味深い改善につながる場所がレバレッジであるが、ひとつ問題なのは、変化を生む効果的作用点は、システムのほとんどのメンバーにはきわめて見えにくい点である。
ハイ・レバレッジを見つけるための簡単なルールはない。しかしそれに役立つ考え方はいくつかある。「出来事」よりも潜在する「構造」を見ようと努めることが出発点だ。「スナップショット」ではなく変化のプロセスとしてとらえることが大切なのだ。
9. ケーキを手に入れ、味わうことができる_同時にではないが
すこぶる厄介なジレンマでも、システムの観点からはぜんぜんジレンマでないことがある。ジレンマは「プロセス」思考ではなく「スナップショット」思考の産物なのだ。
権力集中と分権、やる気のある社員と競争力ある労働力コスト、会社の評価と個人の満足度といった見せかけのジレンマの多くは、静態的思考の副産物である。
できる事柄を時間軸のある一点で考えるから、これらは固定的な「あれもこれか」の選択に見えることだ。真のレバレッジは、時間をかけていくなかでどうやったら両方とも伸ばしていけるかを考えるところにある。
10. 一頭の象を分割しても子象二頭にはできない
生体組織は一体性をもつ。その性格は全体のありようしだいだ。おなじことは企業組織にもいえる。経営管理をめぐる難題を理解するには、その問題を生むシステム全体を眺める必要がある。
それぞれの会社の抱える問題をはっきり目にしながら、部門の方針が他の部門の方針とどのように関係しているかを見て取る者はいない。全体像をとらえるにしても、組織関連のあらゆる問題が組織全体を眺めることだけで理解できるわけではない。
問題によっては製造・マーケティング・調査といった主要部門の相互関係をつかむだけで理解される場合がある。その機能領域内で重大なシステム的力が働く問題とか、産業全体の力学を考慮する必要のある問題もある。
当面の問題にとってとくに重要な相互関係は、組織内の狭い枠とは関係なく検討すべきであるということである。だが、組織内では壁ができてしまい結果、部門を超えた検討はできなくなる。問題を背後に置き去りにして、他の誰かに処理をまかせることもありやっかいだ。
資金的潤沢な企業は、新しい事業をたえず買収し、成熟したビジネスと見なすものを、再投資せずしてただ収穫に走ってしまう。人はときに一歩進んで、象を二つに分割することがある。そこで手に入れるのは、二頭の子象ではなく、混乱である。
混乱とは、何の改善の手掛かりも見つからない錯綜した問題のことだ。その手掛りは、つかんだ断片を見るだけではわかならい相互関係にある。
11. 罪を着せる外部は無い
人は問題の責任を外部に負わせようとする。競争相手、マスコミ、市場の気まぐれ、政府といった「ほかのだれか」のせいでこうなったのだと。しかし外部などは無い。解決策は「敵」との関係のなかに存在するのである。
参照文献 組織とは、チームとは、学習していく組織とは、と問いを立てながら読んだ。とても良い書籍でした。
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