【影響力の武器】原理と実践的検証:損失回避と希少性の原理 / 説得の一言 / 想像しやすさ / 応用できる説得力

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損失回避と希少性の原理から得られる教訓

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コカコーラのマーケティングの世界で過去十年で最悪の失敗と呼んだ決定を下しました。その決定とは、甘みの強いペプシを好む人が増えているという調査データを踏まえて、従来の製法のコークを市場から撤退させ、もっと甘いニュー・コークに切り替えるというものでした。

これに対して、多くの愛飲者から大きく反対され、反対協会まで立ち上がり、集団訴訟沙汰まで発展していきました。

興味深いのは、ある過激的な反対者(コーラ愛飲家協会会長)にブラインドテスト(単盲検査法)を行ったにもかかわらず、オリジナルとニュー・コークの違いが分からなかったにも関わらず、彼にとってはそのことはどうでもよかったという点です。

彼にとっては、”好きな物の価値よりも失いそうなものの価値のほうが高かった“ということが興味深いところです。

コカコーラが稚拙な意思決定を至った経緯を以下の 2 点を挙げています。

  1. 希少性の原理で表される心理、すでに手にしている物の喪失に対して過敏に反応する傾向。
  2. 従来持っているイメージを市場調査ですでに測っていたのにも関わらず、自分達のデータを社会的影響の要因という考え方とは結びつけなかった。

データの捉え方の間違い

コカコーラのブラインドテストは、大企業らしく大規模で徹底された試飲テストをしています。
結果は、55%対45%でニュー・コークのほうがオールド・コークより好まれることが分かったそうです。無表示ではないサンプルテストも行い、ニュー・コークのほうを好んだ人がさらに6%も多いという。

ところが満を持してニュー・コークの発売を発表した途端に人々はオールド・コークを支持をはっきりと表明しました。
ニュー・コーク支持者の 6 %増は、試飲テストの結果のなかですでに判明した時に、問題はコカコーラ社がその結果の意味を読み違えたことです。

人は手に入らないと分かったら、そっちのほうがずっと欲しくなるということです。
何かを得る可能性よりも、何かを失う可能性に対して、人はより敏感に反応するという傾向にあることを”損失回避”という考え方立証したのは、行動科学者の研究者であるダニエル・カールマンとエイモス・トベルスキーでした。

この考えは、財務活動、意思決定、交渉、説得などを含めて、人間行動の多くを説明することができます。
投資の世界でも、すでに得た利益を失いたくない為に早く売ってしまう行為や、すでに損失が確定している株式を保有し続ける塩付状態にするのもこの傾向に当てはまります。

この考えはマーケティングの世界でもよく使われる手法ですね。顧客にメリットばかり強調する広告よりも、顧客が失うもののほうに的を絞ったほうが、はるかに説得力のあるメッセージになります。

社会学者のマージョリー・シェリーが行った研究では、経営者に対して、潜在的な利益としてある情報を提示したときよりも、潜在的な損失として同じ情報を提示したときのほうが、その意思決定にはるかに大きく影響を与えることが示されています。

たとえば、それを採用したら、その部署に最高何千万円の節約になりうるという案があるとすれば、その案の節約として提示するのではなく、採用しなければ、その金額を失うことになるという表現で伝えると、説得力が高められるということになります。

損失は説得力を増す

私の場合、この損失という考え方でコスト削減や効率案を提案することが多く、これだけ削減しなければ、受注自体得られませんので、これだけの金額が失われますと伝えます。そうした場合、実行率が上がるのは現場でも証明されました。

こうしたやり方を研究しているのが、カルフォルニア大学の研究者たちが、地元の電力会社と名乗り、住宅の所有者たちにエネルギー効率改善策を勧めたところ、毎日50セント節約できますと言われたときよりも、実行しないと毎日平均50セント失い続けると言われたほうが、実行率で3倍も高くなった報告している。

説得を後押しする決めの一言

人に何かを頼むときには、たとえ自分にはその理由が明白に思われても、必ず強力な根拠を示すべきだと伝えています。大きな要請であってもまともな理由が添えられるときには、承諾率は倍増します。

人はそこに絡む利害関係の大きさで判断していると考えられます。

利害が小さな場合は、どう行動するかを決めるにあたって、問題を真剣には考えず、心理的に手っ取り早くて楽な判断を下しがちだという点です。

利害関係が大きくなるにつれ、どう答えるか決める際に、相手の根拠の確かさを真剣に考慮するようになり、意思決定することになります。

( なぜなら ) 〇〇だから という言い方には、働きがあると指摘しています。

● 相手にも ( なぜなら ) 〇〇だから と、こちらに対して説明するように促すこと

例えばあなたがある企業で働いているとして、取引先の関係をより強固にしたい場合に必要とする理由を考えてもらうことは重要です。

グレゴリー・マイオらによる研究では、この方法によって、それまで続いた取引関係が単に習慣によるものでなく道理にかなったものだと再認識され、あなたの会社と顧客との関係が強化されることが示されています。

相手に ( なぜなら ) 〇〇だから と理由を言わせることは、あなたの素晴らしさを称えると同時に、相手側が自ら自分自身を説得しているのです。

想像しやすさが成否を分ける

相手ある見方を好む理由を挙げてもらうことにおいて、対象とする商品やサービスを選ぶ理由を消費者にできるだけ多く考えてもらうのが、賢明な方法に思われますが、最近の研究ではこの方法が逆効果になることが明らかになっています。BMWとベンツの違いにおける広告を見てもらう調査で、ミヒャエラ・ウェンケらの行った学生を使った実験がユニークです。

実験:以下の二つの内容をグループを分けて実験してもらう。

① BMWかベンツか?BMWを選ぶ理由はたくさんあります。あなたは十個挙げられますか。
② BMWかベンツか?BMWを選ぶ理由はたくさんあります。あなたは一個挙げられますか。

結果

BMWを選ぶ理由を十個挙げよと消費者に求めた広告は、一つだけ挙げよというものと比べ、BMWに低い評価を、ベンツに高い評価をもたらしたと報告している。

心理学では、この何かを経験することの易しや難しさを経験の「フルーエンシ―:流暢さ・滞りのない状態」と呼んでいます。この結果から、顧客に自分の見方を支持してくれる理由を考えてもらう前に、どのくらい簡単かをよく考える必要がありそうです。

結果から分かる事

難しそうな場合は、二、三点挙げるだけにしたほうがよく、この結果を逆手に取ることもできます。
顧客に競合他社の商品やサービスを好む理由をたくさん考えさせることで、こちらのほうが優位に立てるかもしれないわけです。

よく番宣などで多くの番組で同じようなPR活動をしていますが、論理的根拠を数多く挙げるのが難しい商品や企業ほど、相対的にあなたの品物やサービス、提案のほうがよく見えることがあります。

私も、実際選択する場合によく知っている商品において、購買する根拠や理由を考える場合がありますが、それがあれもこれもとなると、ピンポイントで私に向けているとは感じず、逆に他の商品を探してしまう傾向があります。

様々な分野にも応用できる説得力の効果

【恐怖を呼び起こす説得の微妙な効果】

宣伝キャンペーンなどを行う場合にも、潜在顧客に対し自社の商品やサービスを使えば危険を軽減できると訴えるときは、必ず危険を減らすための明確で、具体的、効果的な方法を一緒に伝える必要があり、恐怖のみでは、かえって逆効果となり、何の行動も取らないという反応に追い込んでしまいかねないと指摘されています。

【悪魔の代弁者の効用】

わざと異論を唱えさせる偽の反対者と本気で反対している本物の反対者における最善の策として、大多数のメンバーにおける自分たちの考え対する自信を深める結果(あらゆる反対案や代替案を検討して合意する過程を経て)となり、代弁者の効用を伝えています。

多数の部下や同僚が安心して反対意見を言えるような職場環境を創り、その状態を維持することが、間違った方向に行きそうな場合の指針となり、見識のある人が積極的に知らせてくれれば、見せかけではない本物の議論を通じた深い理解が得られるといいます。

【ウェイターから学ぶ説得術】

今では多くの飲食店のウェイターが使っている、模倣することの重要性が示されています。相手のメニューを正確に真似る(繰り返す)というのがソレですね。自分に似た人を好むという人間のもって生まれた性質を利用しているといえます。交渉の場面においても相手の行動を模倣することで、合意形成する率が増え、信頼度が増すことはコミュニケーションの場で多く利用されています。

【類似点が導く大きな力】

人は名前のように何かちょっとしたことでも自分と関連があるものには、特に好意を感じやすいようです。出身地が同じ、学校が同じ、信条が同じ、名前の響きが似ているなど特に効果的ですよね。

【読みやすく簡潔にが鉄則】

人は発音しやすい言葉や名前に対して愛着を抱く傾向がある、読んだり発音するのが簡単な社名や株式銘柄記号のほうが、それが難しいものよりもプラスのイメージを与えるそうです。手書きのメッセージの場合、字が綺麗かどうか(内容は同じ)で説得力に差が出ることが研究で明らかになっています。

英国のコンサルティング会社の調査によると、経営者における説明効果では、従業員の56%が、経営者や上司とのコミュニケーションは分かりづらく、訳の分からない言葉がよく使われるため、メッセージが伝わりにくいと考えているそうです。言葉の意味を理解するのに苦労すると、そのメッセージは説得力に欠けると感じ、その伝える側はあまり知的ではないと考えるそうです。

【韻を踏むことで増す影響力】

実験で得られた効果で人は韻を含むことわざやメッセージのほうがそうでないものより的確だと感じるそうです。これは古くから使われている広告テニックですね。韻を使った広告は好感度が高く、印象に残り、他の人に伝えやすいという点が挙げられます。商品に関して何も言うべきことがないときには、商品名そのものを歌にする手法がソレを物語っています。それは頭の中で解釈するのが簡単な為だそうです。

【交渉ごとに悲しみは御法度】

人は買い物をすることで落ち込んだ気持ちを癒そうとします。買い手は悲しい気分だと、普段と比べて、同じ品物に対してより高い値段を払ってよいと思い、逆に売り手が悲しい気分のときは、同じ品物より低い値段で手放しても良いと思うようです。

何か感情的になる出来事の直後ならば、たとえ自分の意志決定能力に影響はないと思っていても、その交渉を遅らせるべきです。少し遅らせるだけでも、気持ちを落ち着かせて理性的な選択を行うには十分であると伝えている。

高い価値を持つ判断や意思決定、決断を行う場合には自分を落ち着かせる時間を取る習慣を持つことも重要であり、重大な決定が控えている場合には特に大切ですね。

【注意を鈍らせる感情の高まり】

研究科学者のクリストファー・シーとユバル・ロテンシュトライヒは、人の判断力や意思決定能力は出来事そのものが感情的な問題であることが原因だと考え、感情が高まると人は物事の数が多いか少ないかに無頓着になる一方、単純にそれがあるかないかに注意を向けるようになるというのです。

研究結果から、人は感情的になる経験をすると意思決定に悪影響を受けて、不利な提案(数字的な不利な条件など)を受け入れてしまいかねないことが分かったそうです。

こうした要因から影響を受けるのを避ける方法として、数に注意を向ける練習を交渉の前にするといった簡単なことでも、数の違いを認識する能力を取り戻すのに役立つそうです。

注意力を曇らせるような感情を排除し、事実に基づいた適切な情報を用いて交渉を進め、最善な決断を下すことができると伝えています。

参照文献 【影響力の武器 実践編―「イエス!」を引き出す50の秘訣

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