【成功神話と現実の意思決定】自信過剰・予言・うぬぼれ・神話の罠に陥らない為の3つの視点と5つの要因

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予言の自己成就

予言の自己成就】 たとえ根拠のない予言(=噂や思い込み)であっても、人々がその予言を信じて行動することによって、結果として予言通りの現実がつくられるという現象のこと。 例えば、ある銀行が危ないという噂を聞いて、人々が預金を下ろすという行動をとることで、本当に銀行が倒産してしまうというもの。

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豊川信用金庫事件

豊川信用金庫事件】 1973年12月、愛知県宝飯郡小坂井町(現・豊川市)を中心に「豊川信用金庫が倒産する」という噂(デマ)から取り付け騒ぎが発生し、短期間に約26億円もの預貯金が引き出された事件。伝言ゲーム式にデマが形成され、事態がパニックに発展した理由として、次のような要因が存在した。

  • 事件が発生した1973年当時、10月にはトイレットペーパー騒動が発生するなど、オイルショックによる不景気という社会不安が存在し、デマが流れやすい下地があった。
  • 口コミで情報が伝わるうちに、情報が変容した。
  • 事件の7年前の1966年、小坂井町の隣の豊橋市の金融機関が倒産するという事件があり、出資者の手元に出資金がほとんど戻ってこないという大きな被害を与えていた。デマの伝播経路の中のクリーニング業のHもこの7年前の倒産被害者であったため、善意で周囲の人間にデマを広めてしまった。
  • こうした背景をもつHの目の前で、Jが大金をおろすよう妻に指示したため、デマがリアリティを獲得し、パニックの引き金となった。
  • 狭い地域社会の中で「交差ネットワークによる二度聞き効果」(別々の人から同じ情報を聞くことで、それに信憑性があるものと思い込んでしまう現象)が発生した。

【損失回避と埋没費用】

投資やギャンブルをしていると、時として損失が膨らみ続けることがある。そんなとき人は、さっさと諦めて損失を確定するのではなく、損失の確定を先延ばしにして、あわよくば利得に転じようと画策する傾向が強い。

カジノやギャンブルで負けが込んできた客は、そうでない人に比べて、それまでの損失を一発で取り戻すため大博打に打って出る傾向がある。 このような傾向を、ブレークイーブン効果と呼ばれる損失回避の一種である。

そのような中で、現実世界では、損失を回避したり、隠蔽したり枚挙に暇がない。巨大企業から国家まで知識層や高い専門性をもった優秀な人々が起こした事件をケースを取り上げてみたいと思う。

エンロンの損失回避

エンロン破綻】 2000年8月にはエンロンの株価は90ドルを超えた。この時点で経営陣は「株価は130ドルから140ドル程度まではこのまま上昇するだろう」との見通しを提示し、アナリストもエンロン株を「ストロング・バイ」として推奨した。そのため、年金基金などの堅実で知られる投資主体も、エンロンの株・債券をポートフォリオに組み入れていった。

エンロン損失隠し】 裏では、取引損失を連結決算対象外の子会社(特別目的事業体)に付け替えて簿外損失とすることも積極的に行われた。会計を全米有数の会計事務所であったアーサー・アンダーセンが担当していたために、決算における市場の信頼は厚かったが、実際にはアーサー・アンダーセンならびに顧問法律事務所も、数々の違法スレスレのプロジェクトの遂行や粉飾決算に加担していた。損失を簿外に隠蔽するプロジェクトの例として、ADSLをベースとするISPであったリズムス・ネットコネクション株に関するLJMプロジェクトがある。

エンロンはリズムス株を1998年3月に1株あたり1.85ドルで買収したが、1999年4月に同社が上場すると上場日の終値は69ドルにもなり、その後も上昇を続けたため、エンロンが採用していた時価会計によって評価益が発生した。しかし、実際には契約によりエンロンはリズムス株を4年間売却することができず、あくまでも経理上の評価益にとどまっていた。

隠蔽とギリシャ危機

経営者や国家など赤字事業からの撤退をなかなか決断できない理由のひとつも埋没コストの錯誤にある。 撤退しなければ、いつの日か業績が上向くかもしれない、そうすれば、これまでにつぎこんだ経営資源が戻ってくると考えてしまうものである。

そして少数の地位を持った人々の自己保身や体裁の為、いづれ企業や国家は破綻を迎えることになる。

埋没費用:サンク・コスト

埋没費用ないしサンク・コストとは、事業に投下した資金のうち、事業の撤退・縮小を行ったとしても回収できない費用をいう。初期投資が大きく、他に転用ができない事業ほど埋没費用は大きくなるため、投資も新規企業の参入も慎重になる。このことにより、寡占論では埋没費用の多寡が参入障壁の高さを決める要因の1つであるとされる。

GREEK CRISIS : The Real Causes

ギリシャ危機

09年10月、ギリシャにおいて政権交代が行われ、ゲオルギオス・アンドレアス・パパンドレウ新政権下で旧政権が行ってきた財政赤字の隠蔽が明らかになった。従来、ギリシャの財政赤字は、国内総生産(GDP)の4%程度と発表していたが、実際は13%近くに膨らみ、債務残高も国内総生産の113%にのぼっていた。

10年1月12日、欧州委員会がギリシャの統計上の不備を指摘したことが報道され、ギリシャの財政状況の悪化が表面化。10年1月15日、財政赤字を対GDP比2.8%以下にするなどとした3カ年財政健全化計画を閣議で発表するが楽観的な経済成長が前提であった。

格付け会社は、相次いでギリシャ国債の格付けを引き下げ、債務不履行の不安からギリシャ国債が暴落した。株価も影響を受け、世界各国の平均株価が下落し、ユーロも多くの通貨との間で下落した。10年4月にユーロスタットが発表した財政赤字は2009年10月に発表された13%近くではなく13.6%であることが発表された。

コンコルドの誤謬

コンコルド効果は、心理現象の一つ。超音速旅客機コンコルドの商業的失敗を由来とする。ある対象への金銭的・精神的・時間的投資をしつづけることが損失につながるとわかっているにもかかわらず、それまでの投資を惜しみ、投資をやめられない状態を指す。

【専門家の過信】

● 投資の意思決定でのバイアス

一部の投資信託の運用会社は、成績の悪い投信の運用を終了して、預託者に償還してしまうことで、比較的成績の高い投信を残し、表面的な平均リターンを引き上げているといわれる。 成績の悪い投信を終了することで、平均リターンをいくぶん引き上げられていることが見出されている。 【Elton et al.1996;Carhart et al.2002

リーマン・ブラザーズ

米国第四位の規模を持つ巨大証券会社・名門投資銀行の一つとされていたが、2008年9月15日に連邦倒産法第11章(日本の民事再生法に相当)の適用を連邦裁判所に申請し倒産した。世界金融危機顕在化の引き金となり、世界経済に大きな影響を与えた。倒産するまでAAAの格付けを受け、世界経済の中枢とも言える存在であった。

リーマン・ショック

負債総額 約6000億ドル(約64兆円)という史上最大の倒産劇へと至り、世界的な金融危機を招いた。

日本のメガバンク数行も参加したが、後の報道であまりに巨額で不透明な損失が見込まれるため見送ったと言われている。最終的に残ったのはバンク・オブ・アメリカ、メリルリンチ、バークレイズであったが、米国政府が公的資金の注入を拒否していたことから交渉不調に終わった。

交渉以前に、損失拡大に苦しむメリルリンチはバンク・オブ・アメリカへの買収打診が内々に決定され、バークレイズも巨額の損失を抱え、すでにリーマン・ブラザーズを買収する余力などどこも存在していなかった。

これを境に世界的な経済の冷え込みから消費の落ち込み、金融不安で各種通貨から急速なドル安が進み、米国市場への依存が強い輸出産業から大きなダメージが広がり、日本経済の大幅な景気後退へも繋がっていった。

知覚のコントラス効果 

知覚のコントラスト効果 wiki:マインドコントロール】

日常的には「高級店で高価な値札を見た後で安価な店に立ち寄った際に、普段は手が出ない商品でも安く感じられる」という人間心理にあらわれる。

一部宗教団体や思想団体での勧誘では、「戦争・飢え・差別・殺人・自殺・不倫・離婚」など、世の中の暗い面を過剰に強調した映画やビデオ等で被勧誘者に対して叩き込まれ、被勧誘者は一時的に絶望的な心理に追い込まれる。

被勧誘者は、その暗く八方ふさがりな心理にある中で、明るい出口としてその団体の理想や行動が示されたり、その流れで教祖の名前や写真が明かされたりするため、それらが実際以上に光り輝いて見えてしまう。

進行中のプロジェクトでも追加的投資を行う場合の意思決定でも散見される。経営者が意思決定したすでに失策であるプロジェクトでも、これまで注ぎ込んだ巨額投資額に比べれば、追加投資額は少額に見えるので、追加を許す傾向が散見させる。

こういった場合の意思決定下では、最初から損切や撤退条件を決めていない場合が多い。

【プライドと自信保身傾向から破綻するまで隠し続ける】

埋没コストの錯誤は、企業経営者が合理的であれば、既存事業の評価においては客観的な今後の収益見通しが重要であって、これまで注ぎ込んだ資金の多寡は関係ないはずである。

正直に、経営陣自らが損失を早めに申告し、投資家やステークホルダー等に客観的な対策や意見を聞き入れ、賢明な戦略を実施したり、場合によっては経営陣を入れ替え、体制を一新するべきである。

ところが現実の意思決定では、経営者は注ぎ込んだ金額を超えて巨額損失を隠し、自己の保身とその巨額損失ゆえ多額の資金をつぎ込んだ事業ほど撤退をためらい、破綻するまで隠し続けるようである。

【自信過剰に陥りやすい5つの要因】

① 自分はすぐれているという錯覚 ② 偶然の出来事も自分でコントロールできるという素朴な思い込み ③ 私たちは能力は限られているので物事の進展のあらゆる可能性をすべて想像することはできないということ ④ すでに信じている情報の確証となる情報のみを求め、矛盾する証拠を探そうとはしない ⑤ 成功したことのみ覚えていて失敗したことは忘れ、選択的に評価し、過去の決定は客観的に評価ができない

組織の場合、経営者をはじめとして、組織のあらゆる箇所で構成員の意思決定が何千何万となく積み重ねられる。その総体がマネジメントである。

経営者の意思決定と企業の成果には、予言の自己成就的な側面が働いていると考えられる。予言の自己成就的な意思決定が行われたとしても、ついてくる従業員などが戦略を実施することで必ずしも上手く行くわけではないが、それでも人は共感を求め、神話や物語に突き動かされるのである。

【自信過剰に陥らないための3つの視点】

  1. 自分にも自信過剰になる傾向があることを自覚する。
  2. 専門外の問題を検討するときは特に自信過剰にならないように気をつける。
  3. 自分の予想や答えが間違っているかもしれない理由を探す。

人生で成功を収めるためには、自信が必要であり、だからこそこのページを読んで自分自身を信じる事や、すぐれた意思決定をする能力を信じることをやめようと思う必要はない。

だが根拠のない自信過剰はトラブルのもとになる。この悪癖を最小限に抑えるにはどうするか、それには、まず自分にも自信過剰になる傾向があることを自覚し、その兆候を積極的に探すことが重要である。

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