
起業と倒産の失敗学
経済にとって最も大切なことはなにか、それは新しい企業、新しいチャレンジャーが登場することである。
チャレンジした結果、失敗したという事実を公正に評価することは大事である。失敗は挑戦者の宿命でもある。
だからこそ、挑戦する人を誇り、失敗をも正しく評価し、新たな再生をつなげるしくみづくり、新しい挑戦者が次々に出現し、その一方で役割を終えた退場すべき企業は退場することが定着するその”循環”があってこそ日本経済の再生も果たされよう。
これについては賛成である。私も倒産企業に3社在籍していたこともあり、こうした仕組や事例は大いに参考になる。
またそうした組織で働いていたことで、経営陣が下記にあるようなパターンに陥っているのがよくわかった。
本書では「事象の概略」「倒産時の会社概要」「会社設立~成長の経緯」「失敗の経緯」「失敗の理由」「その後」「知識化」といった項目の整理で分かりやすく記載されています。
さらに詳しい内容を知りたい方は、【 起業と倒産の失敗学 (文春文庫) 】 を参照されたし。
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経営を失敗する典型的な人的原因 10 の症状
- 欲得:個人の欲得がモノづくりの原点を忘れさせた
- 気分:感覚の冴えに頼り見切りを誤る
- うっかり:細心の注意を払っていても避けられなかった誤判断
- 考え不足:際立つ独創性を大事業に育てられなかった浅慮
- 決まり違反:常識を無視した拡大戦略が裏目に
- 惰性:豪放磊落、面倒見のよい性格が仇に
- 恰好:体面に固辞し無理を繰り返す
- 横着:”手抜き”経営で有名店舗を食いつぶす
- 思い入れ:世の為という思いが経営判断を誤らせる
- 自失:社外活動に熱中し、”無判断”のうちに破綻
1. 欲得:個人の欲得がモノづくりの原点を忘れさせた
経済的な利益や社会的な地位などに目がくらんだ失敗。
2. 気分:感覚の冴えに頼り見切りを誤る
気分が沈んでいたり、高揚しているときに人は失敗を犯しやすい。
3. うっかり:細心の注意を払っていても避けられなかった誤判断
見過ごしたり、忘れていたり、つい判断を誤ったという種類の失敗。
4. 考え不足:際立つ独創性を大事業に育てられなかった浅慮
思慮が浅かったり、まったくないという失敗。
5. 決まり違反:常識を無視した拡大戦略が裏目に
ルールを無視したり、手抜きをしたり、ルールに対して無知だったりするための失敗。
6. 惰性:豪放磊落、面倒見のよい性格が仇に
マニュアルに寄りかかって考え足らずであったり、慣れきってしまうことによる思い込みや、持って生まれた性癖で失敗を生ずるケース。
7. 恰好:体面に固辞し無理を繰り返す
体面にとらわれたり、必要以上に恰好を付けようとしたための失敗。
8. 横着:”手抜き”経営で有名店舗を食いつぶす
他人に責任転嫁したり、手を抜いたりするといった、本来やるべきことをやらなかったことから生じた失敗。
9. 思い入れ:世の為という思いが経営判断を誤らせる
強い使命感や生き甲斐をもっていたことが、逆に思い入れが強すぎて失敗に至ることもある。
10. 自失:社外活動に熱中し、”無判断”のうちに破綻
まったく未知の事態に遭遇したり、判断ができないような状況で自失状態になったための失敗である。
経営の失敗を活かすための 6 つの処方箋
1. 失敗:見たくないものは見えない
一般的に「失敗は隠れたがる」という特徴をもっている。人は見たいものしか見ない。
とくに失敗という見たくないと思っている現実を直視し、防ぐ方法としては、「見たくないものを探す」という心構えが必要となる。
2. 過信:私だけは誤らない という過信
自分だけはそんな過ちを起こさないという過信して、失敗から学ぼうとしないことである。
根拠もなしに「自分の会社は失敗しない」という前提に立って、失敗から学ぶことを否定する。
こういった経営者が上に立つと、失敗があると現場の責任者の追求ばかりが厳しくなるため、逆に失敗を隠蔽しようとする体質が育つ。
こうした問題は、経営者自体の器の大きさが問題として挙げられ、「許容できる失敗」の容量があり、それが小さい経営者の場合はすぐに容量を超えてしまい、自分だけが誤らないという「おごり領域」が溢れだしてしまう。
3. 傲慢:取り巻きのつくる有頂天
有頂天は、周囲との関係からもたらされる。ビジネスで成功すること自体が自信につながるが、それ以上に「お金があつまる」という事態が出現することが大きい。
○○大賞などの表彰を受けたり、マスコミが取り上げられれば知名度も高まる。店頭公開や株式上場を行うこと自体が自己満足のおごりを生む。
銀行や表彰機関やマスコミが褒めそやす言葉や、ベンチャーキャピタルが投資で声をかけてくるのは、時流に乗って、その時々に目の付く企業に群がる性質をもっているのに過ぎない。
それらが言ってくる甘言は「単なるお世辞」と聞き流すに越したことはない。それに舞い上がってしまうのは、乗せられてしまうほうにも責任がある。
4. ナレッジ不足:成長に伴うマネジメントの再構築
「これまでは、このやり方でやってきて問題なかったのだから」と、企業はしばしば、その成長に伴って変貌(変革)する必要があることを忘れてしまう。
年商のレベルでいうと、80.・200・800・4000億円の節目など、その壁を超えることが出来ない企業も多く、経営者が一人で集中して差配することができるのは200億円程度が限度になる。
その対処策として、マネジメントに長けた片腕を育成したり、スカウトして成功する企業もあれば、マネジメントシステムを企業規模に合わせて大変革させた企業もある。
また同族企業から非同族企業へのシフト、どんぶり勘定を改めて科学的な経営に移行するなど、そうした見直しを行うことに柔軟な姿勢を持つことが重要である。
5. マネジメント不足:トータルな再設計が必要
マネジメントのスタイルやシステムを変更するときは、トータルな視点から再設計が必要である。
その場しのぎの対処療法ばかり繰り返していると、山の中の温泉宿によくある、継ぎはぎだらけの設計構成と同じになる。
人気が出ると、本館の隣に新館を建て増し、建て増しでできた旅館は便宜的処置であって、そのなかで働いている人の立場で考えてみると、非常に危険な状態といえる。
そういった処置を繰り返していくと火災や災害が起きた場合、非常にもろい。これを防ぐには、ある程度の大きさになったら、旅館をまったく新しく建て直すことである。
企業にも同じことがいえる。やはりマネジメントもトータルに設計し直す必要がある。
6. 理念とビジョンの不在:未来を予見する
失敗原因の捉え方は重要である。世の中では、失敗を見る時、「原因」と「結果」だけを見て失敗の原因を捉えようとする。失敗体験を、次に利用できるように分析するためには、原因を「特性」と「要因」とに分けて考えることが不可欠である。
たとえば、雪印乳業の食中毒事件は、企業体質、すなわち儲け優先でどんなことでもやると同時に自分に都合の悪いことは見ないと言う「特性」に対して、たまたま牛乳が安くてあまり儲からないといった「要因」があったために、一度出荷した商品が戻ってきたときに検査もせずに再利用したり、毒素の入った材料を平気で出荷するという「結果」を引き起こした。
このように失敗の構造を把握できた場合、何か仮想的な「要因」を想定することにより、この「特性」があるからこんなことが起きるぞ、と「結果」を推測することができる。未来をも予見できるのである。
こうした失敗原因の捉え方ができると、もう同じ失敗は繰り返さない。
これが「強い会社」をつくっていくプロセスである。
利と情のバランス感覚が必要となる
失敗する経営陣が率いる企業は、第三者が見ても「こんな急成長のカーブがありえるのか?」と疑問を持つケースが散見されるのは、案の定、その実は粉飾が施されていたり、実際に急増していても人員や組織が急膨張に追いつかずに社内が破綻状況に陥っていたりするのである。
翻って、自らも、企業を客観的に見る必要があって、現在の取引先について、売上推移グラフを書いてみるのも有効、自社はどうかと自省するために活用できる。なるほどたしかに、そういう使い方が一番だと思いますし、私もそのように注意深く見る事を大事にしたいと思います。
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