【 コンテナ物語・TPP知財戦争の始まり 】 世界を変えた箱の発明により 高速化した貿易 は TPP によってまた大きく変わる

[`buzzurl` not found]
Pocket

 212555989656322

 

人類においての大発明であるが地味すぎて気が付かない

港に並ぶ、アルミかスチールでできた無機質なただの箱。
溶接されリベットで留められ、木の床と二枚の大きな扉が片側についている。

標準的なコンテナは空き缶と同じで、ロマンのかけらもない。
この実用的な物体の価値は、そのモノ自体にあるのではなく、その使われ方にある。

様々な経路と手段を介して最小限のコストで貨物を運ぶ高度に自動化されたシステム。その主役が、コンテナである。不思議な事に、様々な学術的研究では、コンテナはほとんど取り上げられていない。コンテナにはエンジンもなく、車輪もなく、帆も無い。

船や鉄道や飛行機のようなマシンでもなければ、船乗りやパイロットが放つ魅力とも無縁である。
経済や貿易に影響を与えたにも関わらず、その陰でコンテナの存在はずっと無視されてきたという。

コンテナリゼーションを単に輸送分野の一現象としてではなく、全世界の労働者と消費者に影響を与えた大きな動きとして捉えた点は、読んでいて、本書がよく捉えていると思う。

スポンサーリンク

コンテナを見つめることで見えること

212555989656319

 

コンテナ自体に主役の素質があったわけではないのに、コンテナの歴史を書いた書籍がなく、コンテナに光を当てたのが本書である。

これは非常に面白かった。他のブログや資料などを読むと、コンテナ発明者であり陸運会社創業者であるマルコム・マクリーンを中心にして書かれているのが多いが、私は彼の事業への取り組みより、これらの影響力とその経緯、未来への方向性や問題について興味があった。

本書の概要は、1870年代に発明された電球が広く普及するまで数十年を要したように、コンテナの普及にも時間がかかった経緯を伝えている。

また、コンテナに関わる様々な人々によって、コンテナ輸送が陸海を通じてモノを移動させるまったく新しいシステムに成長を遂げたとき、初めて貿易や産業のあり方に影響を与えるようになった。

一旦普及局面に入ると、変化のスピードは速く、コストは猛烈な勢いで下落していった。ローコスト輸送が世界中で当たり前になるほど、企業の淘汰が始まり、規模の経済が働き、そこに関わる人々も急速に減ったのである。

そして、輸送コストと経済地理学の関連性も挙げている。経済地理学とは、誰がどこで何をつくっているのか、その分布や空間的差異を研究する学問である。

輸送コストの影響分析が行われるようになったのは、1990年代初めとまだ新しく、輸送コストは取引に重大な影響をおよぼすことは、今では誰でも分かるだろう。

さらに詳しい内容を知りたい方は 【  コンテナ物語―世界を変えたのは「箱」の発明だった 】 参照されたし。

ほとんどの人はコンテナの影響を見つめていない

212555989656320

 

コンテナの普及がすすみ貨物船の大型化、湾岸作業が効率化されると、他のコストよりも大幅に輸送費が大幅に下がっただろう。製造業は地元から全国へ、そして世界へと打って出る。大量につくり大量に打ってコストを下げる傾向は次第に拡大し、その行き着く先はグローバリゼーションという大潮流になった。

経済活動は国境を軽々と越えて世界に拡がった。輸送コストが低下するにしたがい、生産地も人件費の高い国から低い国へとシフトする。

この流れは、あらゆる国の賃金が同一水準に収斂するまで続くだろうと指摘している。こうした変化は、急速に起き、長い事栄華を誇ってきた工業インフラが使えなくなり、打ち捨てられていったという。

1965年から現在まで世界経済は大きく変わっていったが、固定為替相場制の崩壊、数度のオイルショック、植民地主義の終焉、ジェット旅客機の登場、PCの普及、高速道路の建設、変化の続いた時期に、様々な要因からコンテナの影響だけを切り離して説明できるモデルがあるとは思えないという。

過去半世紀の間にみられた貿易パターンや経済活動の拠点の劇的な変化は、コンテナ化との強い関連性を本書では様々な角度から検証していて非常に面白い。

コンテナが登場することで古い経済を破壊がすすんだ

コンテナが登場で、モノの輸送は大幅に安くなった。それは世界経済を大きく変えた。

かつてはどの港にも、安い賃金、劣悪な環境、貨物の積み下ろしで暮らしを立てる労働者がたくさんいた。だがその姿は見かけることはない。数世紀にわたって海上貿易の拠点だった都市も、港として瞬く間に凋落した。

コンテナ港に向いておらず、用をなさなくなったからだ。輸送コストが高い頃は、港や消費者に近い立地が有利であり、製造業はやむなくコストの高い都市周辺に工場を設置していたが、輸送費が下がると、彼らはさっさと地方に移転した。

伝統を誇る老舗船会社は、コンテナ輸送に切り替えるコストを負担しきれずに倒産した。いまでは船は港の中心部から離れたコンテナ埠頭に数時間係留するだけであり、高速クレーンが膨大なコンテナの積み込みを完了した瞬間に、船は錨を上げる。こうしてコンテナは古い経済を破壊し、新しい経済を興しもしたのだ。

212555989656321

 

製造業においては、ある製品あるいはある工程に特化した小型の工場群が伸び、専用工場で加工された部品や組立品や半完成品は、長く延びたサプライチェーンの先にある別の工場に送られる。

遠く離れた先進国のサプライヤーになることは夢物語ではなく、原料や部品を運んでくるコストも完成品を遠い国に送り出すコストも急激に低下したのである。

経済と地理のこの新しい関係のおかげで、これまで国内しかみていなかった企業も国外に目を向けることが容易になったが、地元市場で満足していた控えめなメーカーでも、好むと好まざるとにかかわらず国際競争に巻き込まれる。

現在国内では、TPP 【 環太平洋戦略的経済連携協定 】 の交渉に参加することも決定し、さらなる国際競争に発展していくことだろう。

コンテナによる経営者と労働者のメリットとデメリット

労働者における消費者としては、コンテナ輸送による貿易の増加と高速化によって商品の選択肢が大幅に増えるというメリットを挙げている。

貿易の拡大と共に競争は激化する。新しい製品が驚異的なスピードで市場のすみずみまで行きわたり、価格も下がって平均的な世帯でも購入できる水準になった。

一方賃金面からみると、コンテナは労働者にメリットとデメリットの両方をもたらしたと言う。戦後労働者にとって高度経済成長は、手厚い保証を約束し労働時間は短縮され、手当ては増え、退職年齢は引き上げられたメリットを享受した。

しかし、この待遇改善ラッシュに終止符を打つ一因となったのは、コンテナだと著者は指摘している。輸送費が安くなったことで、どこからでもモノを調達できるようになると、経営者は断然交渉優位に立つ。

世界経済の統合が進むと、例えば深圳市の労働者の賃金がサウスカロライナ州の賃金に影響を与えるようになった。フランス政府が労働時間の短縮と賃金水準の維持を命じると、企業はサッとと先進国にアウトソースに切り替えた。

地球の裏側からでもスムーズかつローコストで輸送できるとなれば、自国生産にこだわるいわれはないからである。

高度な貿易協定で日本はどう変わっていくか

292966101516512

 

コンテナがさらなる貿易の高速化を行う一方で、貿易協定において日本は岐路に立たされている。

本書である 【 TPP 知財戦争の始まり 】 では、TPPの真の狙いは、中国をターゲットにしていると指摘している点である。中国に対しては、欧米は十分に我慢してきた。WTO加盟で中国が大人の振る舞いをすると期待したが、徒労に終わっている。

中国の横暴を抑え込むシステムづくりを始めたいのだと本書は伝えている。ビクトリア・エスピネル知的財産執行調整官が総司令官という。極端な話、中国抜きで、TPPが合意できる紛争処理システムをつくるのが狙いと言う。システムが動きはじめれば、確実に中国にも影響は出てくるだろう。

最近中国は、TPPに参加を検討しだした。 参照記事 【 TPP、中国が交渉参加検討 「利点や問題点など分析」 】

中国が参加する条件は、TPP交渉参加国が取り決めたルールを承認することが条件となるだろうと伝え、中国がTPPで出来上がったルールを自国に都合のよいように変えようとするなら、はっきりと参加は断られるだろうという。

知的財産権の見地から著者は、アメリカと同様に年間数兆円規模で失われているこれらの経済的損失から、TPP交渉に参加し、中国を囲い込みアメリカと共同を目指していくべきと本書では繰り返し述べられている。

このことに関しては、現在政府では同様の動きを展開しており、対中国包囲網及びTPP参加交渉する表明をもってこうした動きになってくるだろう。参加後、国際紛争に巻き込まれた場合に、日本ではこうした紛争処理に強い法律の専門家が排出されてくると期待したい。また、このあたりの業界も成長するだろう。

アメリカの目論む中国の囲い込が成功すれば、中国は変わらざる得ないという。中国は今のままでは、どんなに先端の製品を作って輸出しようと試みても、市場参入できないであろうと伝え、現在日本の企業が出来る事は、中国からの手を引くことだろう。

農業においては、最も心配されるのは、日本側の農業の将来ビジョンが不透明であることをあげている。それさえしっかりとしていれば、交渉にあたる高官も悩む必要もないと言い切っている。

日本の農業の将来像、日本の稲作の将来像に国家的コンセンサスをいまこそ示すときである。医療品に関しては、タフな交渉を強いられ、各国の落としどころによる高度な妥協を見つけるのが難しいとし、現在でも専門家でも分からないとしめている。

TPP交渉を通じ、ルールの積極的運用で、日本が享受できる利益は、失われる利益よりも上回ると著者は推測している。日本は新しいルールを使いこなす力があると私も信じたい。

スポンサーリンク

参照画像 【The Genius of Everyday Things】
参照画像 【The Life of a Shipping Container】
参照画像 【Shipping Containers】
参照画像 【ДУМКА ЕКСПЕРТА】
参照画像 【Logistics Solutions】

DeSwitch Twitter

あわせて読みたい